第99章 陽炎
「帰ったの、ニファ。お疲れさま。」
「ナナさん、お疲れさまです!」
二ファはその頭の回転の良さと正確な仕事ぶりでエルヴィン団長やリヴァイ兵士長からも一目置かれていて、私がいない間の雑務をかなりこなしてくれていたそうだ。
二ファがどさっと机の上に、手紙の束を置いた。
「分けるの?手伝おうか。」
「いえ、少ないほうなので大丈夫です!任せてください。」
「そう?」
二ファが宛先ごとに郵便物をより分けていく。
「届けるの手伝わせてください、ニファさん!」
「フィオ、じゃあお願いしようかな。」
より分けた分をフィオに渡して、フィオが直接兵士のところに届けに行った。宛先を見て振り分けていたニファの目が、その宛名を見た時に一瞬、昏くなった。
「どうしたの?」
「―――アリシアに手紙、なんですけど……。」
「うん。」
「遺族もいないらしいので――――どうしたらいいんでしょうね。悲しいけど処分ですか?」
「――――……遺、族………?」
心臓がギュッと縮む。
「………?はい、あ、ナナさんお戻りになる前だからご存じないのですね………。張り紙がされたんです。アリシア、亡くなったって。」
「――――……いつ………?」
「さあ、年初から一週間~二週間くらい、だったと思いますが……。」
心臓が嫌な軋み方をする。
こういうのは大抵当たってる。
――――あの夜会での、私の身代わりは―――――まさか―――――アリシア………?
――――――まさか、まさかね。
だってリヴァイ兵士長が、身代わりの女性は無事に解放されたって言った。心配ないって。