第99章 陽炎
「―――ナナ、今回ばかりは私もリヴァイに同意かな。ハンデがありすぎるよ。」
「ハンジさん……。」
私を想ってのことと、なにより兵団にとって足手まといになる者を連れて行けない。全うな判断だ。
私は黙って、頷いた。
そしてもう一つ――――班編成の案を話されている時の名簿に、アリシアの名前がなかった。
今回は出立しないのかと思っていたけれど、幹部会を終えて自室に戻ってから、その受け入れがたい事実を知ることになる。
「ナナさん、おかえりなさい!」
「フィオ、ただいま。あれ?二ファはまだ?」
「はい、兵士長に雑務を頼まれたとかで―――――、まだ戻っていません。」
私の新しいルームメイトは――――、新兵のフィオと、ニファだ。フィオは内気な性格で、未だに私と話す時に目を合わさないまま話す。
赤毛に近いブラウンの長い髪を三つ編みにした、幼い風貌の女の子だ。
「今日も随分遅かったですね、いつも団長補佐のお仕事はこんなに遅いのですか?」
フィオが心配そうに目を伏せて尋ねてくれた。
「うん、今日は幹部会があったからね。でも――――、だいたいこんな時間かな。先に気にせずに寝ててね。夜通し書類整理、なんて日もあるから。」
「た、大変ですね……!でも………。」
「うん?」
「い、いえ……なんでもないです……。」
「そう?あ、私お風呂行ってくるね!」
「はい。」
少しの切なさを、熱いお湯で洗い流す。
今日もトレーニングをかなりしたからか、全身があちこち痛い。でも早く勘を取り戻さないと、兵士として役に立たないままは嫌だ。
お風呂から戻ると、ニファが部屋に戻っていた。