第99章 陽炎
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次の壁外調査は、年が明けてからの計画だと聞いた。
来たるウォール・マリア奪還の時に向けて、ルート上の拠点設営予定地に資材を運搬する。
私は、幹部会で話題に上がっていたイルゼのメモを見せてもらった。
驚愕、したと同時に、壁外調査の重要性を再認識した。
私がかつて予想したように、巨人は偶発的に生まれた人間の天敵というわけではなく、何らかの目的で存在していると考えたほうが自然だ。より深く知るために、あらゆる巨人の情報が必要で、エルヴィン団長はこの調査でも、巨人の捕獲も実行すると決めた。
「―――ユミルの、民……?」
「そうなんだよ。ナナ、何か知ってる?」
「――――いえ、ただ――――……どこかで、聞いた覚えがあるような、気が……。」
「えぇっ、思い出して!ぜひ!」
ハンジさんが興奮気味に私を見るけれど、どこで耳にしたのかも全く思い出せない。ただただ記憶のどこかに引っかかっている、そんなイメージだ。
「ど、努力します……!」
それにしても――――、イルゼは、亡くなったのか………。いつも人一倍努力してた。そして多分―――――リヴァイ兵士長に憧れていた。イルゼの目は、いつもリヴァイ兵士長を追っていたから。
ちらりとリヴァイ兵士長を見ても、その表情からは感情が読み取れなかった。
そう言えばここ最近の資料を読んでいて気になったことがあった。
「次の壁外調査の出発地も、トロスト区でしょうか?」
「ああ、そのつもりだが何かあるのか?」
エルヴィン団長が顔をあげた。
「いえ。各兵団の予定を見比べていると、訓練兵団もその日――――、トロスト区で壁上固定砲の実践訓練と記載があったので。調査兵団が出立するその背中を見せて、少しでも多くの志願者が来てくれるといいなと思いまして。」