第98章 帰巣 ※
「――――ぁああぁぁっ……ひ、ぅ…っ………!」
「――――狭い……っ……、それに……熱い………っ………!」
エルヴィンは上体を起こしてシャツを脱ぎ捨てると、私の顔の両横に肘をついて、覆いかぶさるようにして腰を打ち付けた。
その肩に両腕をまわして、広い背中をぎゅっと抱くと、あの日切られた傷跡が指に触れた。
「んあっ、は、ぁっ……あ、傷、……っ……治っ、た……?」
「ん……?ああ……っ、もう、全く、元通り、だ……、君の、おかげで。」
「よか、った……。」
その目を見つめると、また自然と唇が重なる。
その合間にも、最奥を突かれて漏れ出る吐息が続いて―――――エルヴィンの乱れる前髪と、滴る汗が感じてくれているんだと思うと、また勝手に中がきゅ、と締まる。
「……あぁ……またここで君を抱けた。」
「……え……?」
「……本当は少し、不安だった。」
「なにが……?」
「俺の腕に、戻らなかったらどうしようと。」
エルヴィンは私の首筋に顔を埋めて、切なく漏らした。ごめんね、ごめんなさい。私がいつまでもふらふらと――――全てを綺麗に断ち切れずにいるから。
でも、わかって。
あの日々に――――リヴァイさんに、どうしても囚われている部分はある。それは否めなくて、きっとそれらが今の“私”の多くの部分を創っているから、全てを無くしたら私は私でなくなってしまう。
でも、共に生きるのも、
あなたが望めば共に死ねるとさえ思うのも、
エルヴィン、あなたなの。
「私が見つけた帰る場所はここ。――――だってエルヴィンがくれたんだよ、これ。」
私は首もとで輝く翼のネックレスを指に絡めた。
「私が帰る調査兵団という場所をくれて――――帰るべき場所でいてくれて、ありがとうエルヴィン。」