第98章 帰巣 ※
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ナナは微笑んだ。
そのネックレスを最初に渡した時は―――――君は自分はリヴァイのものだからと言って、律儀に俺に返した。
時が経って、もっとお互いを知って君が俺を受け入れてくれた時に再びそれを贈った。
女性に贈り物を突き返されることなんてこれまで一度だってなかったし、更に言えば例え返されても、同じものをまた贈るなんて俺のポリシーに反する。絶対にしないんだが。
これはリベンジだった。
本物の翼を持つあいつから、ナナを奪い取って―――俺とナナはお互いの片翼であって、離れないんだと見せつけるために、もう一度ナナにそれを贈った。
想いを重ねあって、細い首筋にそれをあしらう時―――俺は君に首輪を、鎖を繋いだような征服感と優越感を抱いていたんだと言ったら――――君は俺を軽蔑するかな。
ナナにとってリヴァイは特別だ。
それは過去が織り成すもので、変えられない。
それでいい。
時折熱を帯びた顔で、心ここにあらずといった様子でいるのも知っている。君が小さく唇を触っている時は、無意識にリヴァイとのことでも思い出している時なんだろう。
だがナナは俺の元に必ず戻る。
帰巣本能が、帰る場所を俺だと認識している。
共に生きる相手は俺だと認識している。
なぁリヴァイ、実にいい勝負じゃないか。
「――――エルヴィン?」
「……ん?」
「考えごと?」
「………とても似合っているなと思ってね。」
「……嬉しい。」
「いやほど抱いていいか?」
「いやほど?」
「――――そう、君が嫌がるまで。」
「ふふ、じゃあ終わらないね。」
「…………。」
「―――だって嫌になんてならないし―――、ずっと一緒にいたいよ?」
「―――愛しい君の、望むままに。いつまでも一緒だ。泣きわめいても、離さない。」
あられもない姿で紳士を気取って口付けると、淫らな姿のはずのナナもまた、その姿に似合わないほど清らかな聖女のような微笑みを見せた。