第98章 帰巣 ※
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随分体力も技術も落ちてしまったはずだから、午後からのトレーニングには混ぜてもらおうかな。そう思いながら廊下を歩いていると、向こうの方から、足音がする。
まだ姿も見ていないのにわかる。
心臓がどくん、と鳴った。
「――――リヴァイ兵士長。」
廊下の角を曲がって来たリヴァイ兵士長が、私を見て驚いた顔をした。
「ああナナ。そうか、今日だったのか、戻るのは。」
「はい。ただいま戻りました。王宮での件は、守って頂いて――――ありがとうございました。」
頭を下げると、また彼はコツコツという足音を鳴らして近づいてきた。私の横を通り過ぎるその時に、私の頭をくしゃ、と撫でる。
「――――それは俺の役目だ。」
「………そう、でしたね……昔から……。」
「――――よく戻った。」
頭を撫でた手をほんの少し滑らせて、頬をなぞっていくのがずるい。こんなことをされたら、誰だってたちまち意識してしまう。
「――――はい……。」
「訓練に午後から入るなら直接訓練場に来い。」
「はい!もちろんです。」
「――――いい心がけだ。」
そう一言残して、リヴァイ兵士長は去って行った。
その後ろ姿の自由の翼を見ると、胸が熱くなる。
帰ってきたんだと、強く実感する。
「――――よし!」
私は訓練に備えて立体機動の準備をすべく、備品倉庫に向かった。