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【進撃の巨人】片翼のきみと

第98章 帰巣 ※




エルヴィンの構想通りにことは運んだ。



夏。



次の壁外調査は、その更に次の調査に向けての拠点設営物資の運搬と共に、巨人の捕獲に成功し、ウォール・ローゼからほど近い場所に簡易な実験場を作り、そこに拘束していくつか実験を行った。

ジャックの時のように―――――捕らえた巨人やその周りの巨人に知性の片鱗がある奴がいれば、逃がしたり逃げようとしたりという行動が見られるかと思った。

――――が、それも虚しく成果はなく、結局は弱点の構造をより深く知る目的で項から背骨にかけてを解剖している最中に死亡した。





「う――――ん、残念だよ……。あらゆる場所を切り刻んで、苦痛を与えれば仲間を呼んだり、助けてと喋ったり、なにか行動を起こしてくれるかと思ったんだけど……何もないまま、死んだ、か……。」



「――――イルゼのメモにあった、喋った内容も謎だしな。“ユミルの民”……敬意を払うような仕草……。」



「うん、謎が深まるばかりだよね……。でもさ!イルゼが残してくれたこのメモは、本当に新しい可能性を色々と示唆してくれてるよね。――――怖かっただろうに、勇敢にも……死ぬ直前までこうして情報を遺してくれる彼女は……すごい兵士だね。」





ハンジがイルゼのメモをパラパラとめくりながら、イルゼに想いを馳せる。





「――――ああ、最期の最期まで戦うことをやめなかった。あいつらしい――――……必ずこの遺志を無駄にしない。俺たちが―――――この世界の真相を暴いて、巨人を掃討してやる。」



「――――さすが、高い志だ。兵士長!」





ハンジがはは、と笑った。

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