第98章 帰巣 ※
「――――エルヴィン、このイルゼのメモの話は上に報告するのか?」
ミケの問に、エルヴィンが目を伏せた。
「――――どうするかな。正直に言うが、俺は王政を信用していない。ナナは外の世界に人類がいると信じているから、この世界を“ここは、外の世界の中で、実験場として置かれた場所なのかもしれない”という意味で言っていたが――――私にはもう一つ仮説が浮かんでいるんだ。その可能性も0じゃないと思うと、報告を躊躇う。」
「――――聞くのも怖いけど、どんな……?」
ハンジが恐る恐る訪ねると、エルヴィンはどこか喜々として話し出した。
――――本当に、今自分がどんな顔で喋ってるか見せてやりてぇ。とんだ、イカれ具合だ。
「もしこの世界の中心でこの世界を思うままに操りたい面々が、巨人を生成して操って、自分達以外の民をこの世界に閉じ込めているとしたら。こんな報告が出て来たらどうなる?」
本当にクソみてぇな想像だ。
だが、『ありえない』とは言えない。
王政の中央の奴らはそれを感じざるをえないほどの振る舞いをしている印象が俺にもあった。
危機感が、なさすぎるんだ。
「――――間違いなく握りつぶすだろうな。」
「だが兵団に所属している以上、得た事実の報告は義務じゃないのか?」
真面目にミケが諭す。
「ああ、通常はな。だが我々は潰されるわけにはいかない。」
「――――だからジャックのことも、報告してないんだね。でも、あまりに戦果を報告しないと今度は、調査兵団の存在意義を軽視されてしまうでしょう?それも避けたいよね。」
「そうだな。そこでだ、今回の壁外調査でウォール・マリアへのルートは決めきれたことだから、次の冬の壁外調査は――――、巨人の生け捕りを実行しようと思うがどうかな。」
「えぇええっ、賛成!!!」
巨人の捕獲と実験はクソメガネの大好物だ。
ソファから立ち上がって勢いよく挙手をした。
「クソメガネ、ちゃんと内容を聞いてから賛成表明をしやがれ。」
「まぁそうだ!ごめんエルヴィン、続けて!」