第97章 燎
「――――はい。ライオネル公爵とも夜会で少し話しましたが――――、やはりまだ……諦めてはくださらないようで……。」
「――――お前のその“面倒な男”を引き寄せる引力はなんなんだ、才能か?」
リヴァイの意地の悪い問いに、ナナが肩をすくめて俯く。
「はは、それでいくと俺達も漏れなく“面倒な男”になるがいいのか?」
「――――自覚はある。」
「あるのか。まぁ俺もあるな。」
「なにを言ってるんですか2人共……。」
「おいナナ。今までよりも身の回りの警護を増やせそうか。」
「はい、なんとかします。あと――――7か月ですし。」
7か月……微妙に長いな。民間で雇う警護だけでは心もとない。
「……7か月の間に、ライオネル公爵と会う予定はあるか?」
「??はい、疫病の蔓延防止と再発時の対処について、ロイと共に再度話合う時間が確か――――3月に。」
「――――もし食事に誘われたり、次の約束を求められたら応じろ。」
「えっ。」
ナナが驚いた顔で俺を見る。リヴァイは不機嫌に輪をかけた表情で俺を睨んでいる。
まぁ、気持ちは分かる。
「――――これからの危機を一番抑制できるのがライオネル公爵だ。君とライオネル公爵が過ごしているところを周りが目撃すれば、おいそれと中央憲兵もその他の貴族たちも手が出せない。半年くらい、その威力で防げるものはある。」
「――――向こうがいいように使われるだけで満足するわけないだろう。それでかっさらわれたらどうすんだ。」
「……そうですよ……あの人も、曲者ですから………。」
「もし攫われたら、取り戻すまでだ。」
「――――とんだ博打好きに惚れられたもんだな、ナナ。まぁ何かあったら俺も一緒に取り返してやる。全力で。心配ない。」
ナナはまた俺とリヴァイを交互に見て、たまらない笑顔を見せた。
「――――あなた方2人がそう言ってくれるなら、私はなんでも、できそうな気がします。」