第97章 燎
「――――抱き締めて欲しい。」
「え?」
そう言って、珍しく両手を私に伸ばして抱擁を乞う。
その姿がとても愛おしくて、それに応じる。ベッドの脇に立ち上がって、ベッドの上のエルヴィンを胸にギュッと抱きながら頭を撫でる。
「――――いい子、エルヴィン。無事で良かった―――――……。」
「いい子、か。照れるな。」
そう言いつつ、エルヴィンはとても嬉しそうに、甘えるように私の胸に顔を埋めてすり寄った。
―――――弱っている時は甘えたくなるものだけど、エルヴィンもそうだなんて、嬉しい発見だ。これは私だけが知っている彼の顔だと思うと、すごく―――――愛しい。
「――――リヴァイ兵士長が戻って来られたら、昨日の話をするでしょう?聞きたい。」
「ああ、そうだな。だけど――――――。」
エルヴィンが私を見上げながら大きな手で私の頬を撫でる。そのまま後ろまで手を差し込み、後頭部を引き寄せられる。
「――――ん……っ………。」
「――――もう少し帰って来なければいい。」
「ちょっ………と、怪我、して、るのに…………んぅ…――――――……。」
ぴちゃぴちゃと音を立てながら、唇を合わせる。
私の方が熱があるんじゃないかというほど、顔が上気する。体温が上がって、身体が疼いてしまう。
吐息の合間に、エルヴィンが至近距離でその蒼い目に私を映して甘く囁く。
「―――――愛してるよ、ナナ。」