第97章 燎
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夜会の翌日。
目を覚ますと、見覚えのない部屋だった。そしてベッドの脇に、リヴァイ兵士長が椅子にかけたままうとうとしている。
私が上体を起こすと、リヴァイ兵士長も目を開けた。
「――――起きたのか。」
「はい……ここは……?」
「宿の俺の部屋だ。夜会の終盤でお前が眠らされて、連れ去られかけたところを阻止した。起きなかったから―――――ここで寝かせていた。」
「それは――――、またご迷惑をかけて、申し訳ありません……。」
また守ってもらって、迷惑をかけて――――いたたまれなくて目を伏せた。その様子をじっと見つめる目線を感じる。
「起きたなら、一つ頼みたいことがある。」
「はい。」
リヴァイ兵士長に連れられて隣の部屋に行くと、そこにはエルヴィン団長がベッドに横たわっていた。
肩から背中にかけて、包帯が巻かれている。
そして―――――血が、滲んでいる。
「――――どう、したんですか……あの怪我……!」
「――――貴族の男が暴漢に襲われて、エルヴィンが庇って切られた。お前が眠らされている間の出来事だ。昨日処置はしたが――――ちゃんと診てやれ。」
「は、はい……。」
「俺は出てる。」
そう一言残して、リヴァイ兵士長は部屋を出た。
「――――エルヴィン……?」
ベッドに寄り添って、汗ばんで額に貼りつく綺麗な髪を指でかき上げてみる。
少し触れた指先でわかる。熱が出てる。
それだけで深く切られたんだろうと想像がついた。
「――――眠ってる……?」
「………ん………。」
小さく問いかけると、エルヴィンが薄く目を開けた。