第9章 欲望 ※
それでもその時間はやってくる。
当たり前だ、私の仕事なのだから。
私は重い身体を引きずって、リヴァイ兵士長の執務室をノックした。返事が、なければいいのに、と淡い期待を寄せて。
私の願いが叶ったのか、執務室からの返答はなかった。ホッとして目線を落とすと、ドアノブのところにメモが挟まっているのが見える。私はメモを手に取って開いた。
“ナナ 訓練場倉庫に来い”
ぶっきらぼうに書かれたそのメモを見て、私はふっとため息をついた。
上官の指示だ。
行くしかない。
こんな夜に、訓練場で何の用だろう……と少しだけ不思議に思いながら、その場を後にした。
夜遅くの訓練場、もちろん人は誰もいなかった。立体機動装置やブレードが保管してある倉庫は、もちろん上官の許可なしには立ち入ることはできない。
重い扉を横に引くと、鍵は空いていた。奥のほうに、蝋燭が灯っているのが見えた。
「リヴァイ兵士長……?そこにいらっしゃいますか……?ナナです。」
声をかけたが返事がない。私はそのまま、倉庫の中へ進んだ。