第9章 欲望 ※
「その………リヴァイ兵士長と……その……付き合ってんのか?」
「…………いいえ。」
またその話題だ。
私の心臓がズキンと痛む。
その否定の言葉は、酷く冷え切っていた。
「そう………だよな!!ごめん俺、どうかしてた………!」
「………いえ………。」
私は目を伏せた。そこに、意を決したようにサッシュさんが言葉を続ける。
「あのさっ…………、俺…………お前のこと………っ!」
「サッシュ――――!!ねぇ、ちょっとこれ見てくれない?装置がうまく反応しないよ!」
サッシュさんの言葉を遮るように、遠くからビクターさんの声が聞こえる。
「あぁ?!うっせぇビクター!!今大事な………!」
「行って差し上げてください。私も………そろそろ戻りますから………。」
私はサッシュさんに一方的にこの場の終わりを告げた。
「あ………あぁ………わかった、また今度な………。」
サッシュさんは残念そうな顔をして、ビクターさんの方へ駆けていった。何を言おうとしたのか、だいたいわかった。
好きだ、と、言ってくれようとしたのではないだろうか。
他人から好意を寄せられて、嫌な人はいないだろう。素直に嬉しいはずが、今の私にはその言葉を受け止める余裕がなかった。
その後、全てを忘れたくて訓練に没頭した。走って走って、言われたメニューを終えても走り続けた。
まるで、今まで毎日楽しみにしていたあの部屋へ行くのを拒んでいるように。