第96章 経緯
気配を感じた。―――――きっと、来た。
エルヴィン団長と、リヴァイ兵長が。
律動に合わせた喘ぎ声を上げて、視線の出どころにちらりと目線をやってみると―――――、取り乱すどろこか、リヴァイ兵長はまるで興味ないと言った様子で、背を向けて去って行った。
絶望した。
こんなにも、プライドを捨ててナナさんを装っても、知らない男に抱かれても、手を伸ばしてすら、くれないの。
「―――――――………。」
「なんだ……?おい、どうした、鳴けよ、ほらっ………!」
腰を打ち付けられても、なにも感じない。
やがて近づいて来る足音に男が焦り出して、そそくさと衣服を整えて私に背を向けた。
その瞬間―――――私の頭上から、剣を持ったマントの男が飛び降りて、初老の男に切りかかった。
―――――まさか、殺す気、なの。
エルヴィン団長が割って入り、代わりに肩を切られたように見えたが、初老の男を守った。
え、え、え。
話が違うじゃない。
殺すの?そんな簡単に?壁外でもないのに?
王都の、王宮で?
混乱を隠せずに動けない私を、マントの男が軽々と担ぎ上げて―――――、その場を離れた。