第96章 経緯
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夜会の当日。
遅れずにアリシアはやってきた。
本当に―――――馬鹿な女だ。
ナナと同じドレスを着せると、どこか嬉しそうにしていたことに、自分自身も気付いていないようだ。カーフェンさんがつついたアリシアの心情は遠からずってとこか。
リヴァイ兵長に執着しているのは、派生した感情だ。元々は―――――ナナへの、憧れが憎悪にすり替わったのだろう。なんとも厄介な感情だ。
そんなもの、無くしてしまえば楽なのに。
「――――相手は見繕ってる。ウェイターが男を誘いだすから、中庭で待て。そこまでナナと面識の深くない男を選んでる。少しぐらい話したって、ボロを出さない限りバレない。安心して相手しろ。そして――――おそらくナナがしばらく中庭から戻らなければ、団長か兵士長が必ず来る。ナナのあられもない姿を見たら必ず駆けつける。その間に俺たちは本物のナナを連れ去る。」
「――――私は置き去りってわけ?」
アリシアは不機嫌そうに俺を睨む。
「いや、俺が付いてる。危なくなったら助けてやる。」
「――――信用ならないけど、まぁ一応わかった。」
「――――あと、なんでナナさんのフリして偉いじじぃに抱かれなきゃなんないわけ?理由くらい聞かせてよ。」
「――――………。」
意外にもめんどくさいことを聞いて来る。さて、なんて答えようか、と思考していると、カーフェンさんが口を開いた。
「――――王都は今、調査兵団の支持派、不支持派で二分しつつある。誘い出しているのは、まだどちらにも振れていない奴か、支持派の人間だ。」
「――――……ナナさんが色仕掛けで支持派を集めてるって思わせたいわけ?」
「――――まぁそうだ。」
「――――そう。」