第96章 経緯
『……なるほどね。中央憲兵がナナの周りを例えうろついても、不思議に思わないってことか。』
『それもある。が、一番は牽制だ。』
『牽制?』
『――――ナナに手を出すのは困難で、とてもじゃないが無理そうだと、そう刷り込め。』
『――――あんたはとことんナナを守りたいんだな。』
『………あ?』
『俺は嬉しい。あんたが地下街から出たその意味を、まだ持ち続けてる事が。兵士長なんて偉くなっちまって、もうナナを守ることはどうでも良くなっているなら、がっかりしてたとこだ。』
『――――うるせぇよ、理解したのか。報酬は弾む。その代わり、舐めた仕事をしやがったら削ぐ。』
『いちいち怖ぇよ。あぁ一つ質問だ。』
『なんだ。』
『情報をただ聞かれたからという理由で垂れ流す情報屋なんていねぇからさ。女に対価を要求してもいいか?』
『――――好きにしろ。恐らく、あいつは“身体で払う”と言いそうだがな。』
『まじか。好みの女だったら食っていいのか?』
『なぜ俺の許可がいる。関係ねえ。好きにしろよ。』
『――――可哀想に、全くの脈なしか。まぁいい、了解だ。』
『頼んだ。』
――――ジルは上手くやった。
この半年でしっかりとアリシアに嘘の情報を信じ込ませたからこそ、ナナを直接的に狙う大きな行動を抑制できている。だが、アリシアの執念を見くびっていた。
諦めるどころか―――――1人でどうにもできないならと思ったのか、より厄介な奴らの口車に乗るという行動を起こした。