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【進撃の巨人】片翼のきみと

第96章 経緯




―――――――――――――――

ジルと別れて兵舎に戻る。

訓練場を見回しても、やはりアリシアの姿はない。今も、ジルと一緒にいるはずだ。俺は団長室に戻ってエルヴィンに報告をした。



「――――どうだった、ジルからの情報は。」

「――――ああ。とりあえずは疑うこともせず、信じ続けてるみたいだな。ただ――――せっかく得た情報が、ナナに手を出しにくくなっただけで動けずにいるまま――――、なにか思い切ったことをしなきゃいいが……。」

「――――本当に抜かりないな。いつからジルに“そっちの仕事”を頼んでいたんだ?」

「……半年前。」

「―――――……そんなに……正直驚いたよ。」



半年前。

アリシアの俺への執着が強くなってきた時だ。ジルと会う度に視線を感じたのは、間違いなくアリシアだった。

あの女の気性を考えれば、必ずジルに接近する―――――そして、俺にしたみたいに“女”を使って聞き出そうとするだろう。それを見越して俺はジルにある仕事を依頼した。



『――――新しい仕事?マジか、喜んで。どんな内容だ?』

『――――近々必ずお前に調査兵団のアリシアという女が近づいて来る。その女は、俺に話した情報を――――ナナの事を聞きたがる。嘘の情報を流せ。』

『おお!なんか二重スパイみたいでワクワクすんな!』

『――――馬鹿野郎、真面目に聞け。俺がお前に依頼しているのは、あくまで“王都でのナナの動向の報告”だと言え。そして―――――、 “実はナナは王都の上流階級の出身で父親はかなりの権力者だ。ナナに何かあれば色んな奴の首が飛ぶ。だから中央憲兵がナナの護衛を秘密裏に行っている。”と。』

『――――了解。……だが、そんなあからさまな嘘、信じるか?』

『――――信じる。それはお前が“情報屋”であるということと―――――、あいつは王政の事を全くというほど理解していない。仕組みや階級、王都というものにほとんど触れた事がない。―――自分の想像に及ばない範疇のことは、無意識に信じやすくなる。――――それに、純粋な奴だからな。もともとの気質が。』

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