第96章 経緯
「別に今日は特に目立ったことはないぜ。いつも通り、ナナの安否の報告だ。」
「―――安否なんて、中央憲兵がナナを守ってるなら確認する必要あるの?」
――――なんだ、何の話だ?
俺達が――――中央憲兵がナナを守ってる?どこからそんな話になってるんだ。命を狙えど、守るつもりなんて微塵もない。
「さぁな。中央憲兵にすら手放しで任せられねぇんだろうな。それほど愛してるってこった。諦めろよ、リヴァイ兵長に執着するだけ無駄だ。いっそ諦めて――――――」
「うるさい……!私は絶対手に入れる。私のこのくだらない人生で一つくらい――――、欲しい物を手に入れたって許されるわ……!」
女は正気じゃなさそうだ。
あのリヴァイ兵長に魅せられたのか、執念を人型に固めたような恐ろしさ。
――――俺には二度と、無縁な感情だ。
だが――――盲目状態の人間ほど使いやすいものはない。特にこの女は直情的で、人を疑うことをしない――――馬鹿と言ってしまえばそれまでだが、いわば純粋な女だ。
“情報屋”からの情報だというだけで、簡単に信じている。
「――――なるほどな………。」
俺はその女に接触を謀るべく、情報を持ち帰ってサネスさんに報告した。
「―――なるほど、うまく使えそうだな。」
「ええ。近々翼の日で調査兵団兵舎に立ち入れそうだから、そこで接触してみたいんですが。」
「――――面白そうじゃねぇか。」
「………ケニー隊長。」
ニヤニヤとしながら、独特の身体を揺らした歩き方で俺達の方に近づいて来る。
「それ、俺が行ってやらぁ。」
「は……?」
思いもよらない言葉に耳を疑う。
「俺ァ調査兵団に興味があってな。懐かしい顔もいることだ。―――――まぁ、会ったら殺し合いになっちまうから、会わねぇけどよ。」
つくづくこの男の考えていることは解らない。ただ、物凄く野心家で――――その野心に感化されている者も多い。
カリスマ性はあるということ、そして―――――途方もなく強いと言うことだけは知ってる。