第95章 暗夜
壁に胸を押し付けられて、尻を突き出した格好で、まくり上げられて揺れるのは見覚えのあるグレーのドレス。
獣のような荒い息を吐きながら腰を打ち付けるのは――――初老の男だ。艶やかで高価な生地のスーツと、偉そうな物言いと態度からその男はおそらく貴族だろうと推測できる。
「――――とんだ売女……っ……だな、ナナ……オーウェンズ……!」
「………っ、ふ、ッ……ん…っ……!」
「―――だが……っ……具合がいい……っ……、投資の、話も……っ……考えてやっても、いい……!」
「――――っ……ぁ、あっ……!」
「―――ほら、出すぞ?!―――はは、孕んだら――――妾にでも、してやろう……!」
その抽送の音が激しさを増す。
「――――リヴァイ、ナナを頼む。」
「――――ちっ、悪趣味にもほどがある………了解だ。」
小声でリヴァイに指示を出すと、リヴァイは辺りを見回して中庭の奥に消えた。
それを見届けて、その男女の方へ、わざと足音を立てて近づく。気付いたのか、男が焦って衣服を整え始めた。
「――――こんなところで、何を?」
「……っくそ、いいところで………!」
男がその場を急いで去ろうとした時、その背後にマントのフードを深く被った人物が舞い降りた。
「――――っ!!伏せろ!!!」
案の定その不審人物は貴族の男の背後から容赦なく刃を振り下ろした。
間一髪のところで彼と刃の間に割って入る事ができたが――――、私の肩から背中にかけて、避けきれなかった刃が肉を切り裂いた。
「―――――ぐっ………!」
揺らぐ視界の中で、グレーのレースのドレスを纏った彼女が、その不審なマントの男と共に消えたのを見た。
「――――ナナ……。」