第95章 暗夜
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「――――ナナ。」
何か起こるのではないか、とナナが強く警戒するように、きょろきょろとあたりを見回す。
あまりに不自然に振る舞い過ぎるのは得策ではない。そっとナナに耳打ちをした。
「私かリヴァイかが必ず見てる。君があまりに警戒しすぎると不自然だ。気を張りすぎず、普通にしていていい。」
「――――でも……。」
「――――私達を信じろ。」
その言葉に、明るく嬉しそうに返事をした。
「……はい!」
ナナは思っていたよりも積極的に、人の輪の中へ入っていった。5年前はなるべく誰とも関わりたくないといった空気で、ホールの隅の方に隠れるようにしていた少女が。
なるべく自分が家を離れる前に、今後の家がうまくいくようにツテを作ろうとしているのだろう。
――――さて……仕掛けてくるのか?ナナにか、私か――――――そう思ってナナを観察していると、1人のウエイターと話をしている様子が目に入った。
そのウェイターが、外の中庭に続く扉を指さした。ナナは頷くと、中庭の方に歩き出した。人気がない場所は危険だ。
ナナもわかっていて、私に目線を送ってから、歩き出した。
リヴァイもそれに気付いているが、運悪くちょうど資金援助をしてくれている商家の主とその娘に捕まっているようだ。調査兵団兵士長という立場上、それを無視することも出来ない。
仕方ない、私が追うか。
と歩みを進めたその時、まるでそれを阻むかのようにあの男が目の前に現れた。