第95章 暗夜
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ナナはその言葉に反応して、問い返した。
「俺達?」
「――――夜会に、リヴァイも呼んでる。」
「えっ―――――――………。」
気まずい、気持ちの整理がついていないのに、とでも言いたそうな顔だ。本当に君はわかりやすい。
「そう、なんだ……。そこまで……警戒することがあるの?」
ナナが途端に不安そうな顔で俺を見上げる。
「――――俺に、中央から出頭要請が来た。拒否したが―――――、何か、仕掛けてくるなら夜会の場もありうる。念のための警戒だ。」
「――――出頭要請―――――、私から、エルヴィンに標的が―――――?」
「ああ。――――もしくは囮か。俺に注意を向けさせたうえで君をもう一度狙うのかは、分からないが。」
「―――――………。」
ナナが青い顔をして黙って、こくん、と生唾を飲んだ。怖いのだろう。
そんなナナの髪をくしゃ、と撫でると、不安げに俺を見上げた。
「俺達には敵が多いな。そんなにも俺達のことを脅威だと思う人間が、王都にはいるらしい。」
「――――そう、だね………。」
「―――――禁じられた恋ほど、燃えるものだ。」
そう言って人目をはばからずその唇を奪う。
ナナはまた顔を真っ赤にして怒るのかと思ったが、そうではなかった。
「―――――怒らないのか?」
「―――――不思議、怒れない。――――嬉しいから………。」
「嬉しい?」
「―――――一緒にいれば、何があっても大丈夫だって思える。」
時間をかけて、涙を流しながら、傷付け合いながら固く結んだこの心は決してほどけない。
いつの間にこんなにも俺の中の多くを彼女が占めるようになったのか。2人でいれば大丈夫だとナナがそう言うのなら、俺にとってもそれが真実になる。
――――どんなに困難であっても、兵団も君も等しく守ってみせる。
俺のプライドにかけて。