第94章 寒慄
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中央憲兵。ナナを諦めてエルヴィンを潰すつもりか。
このタイミングであの男がもし絡んで来ているとしたら――――かなり手を焼く。
それをエルヴィンには言っておかなければならない。
「――――ああそれから、おそらくだが、翼の日に俺の知る限り最大級に危険な人物が入り込んでいた。」
「なに?」
「――――切り裂きケニーって知ってるか。」
「………あの都市伝説のか?」
「――――奴が何か噛んでるかもしれねぇ、おそらく――――ナナのことで。」
「……そう言えば夜会の時のナナが出会った人物も―――――。」
「かもしれねぇと、俺は思っている。確証は、ねぇが―――――。――――そいつがアリシアに接近してた。」
「アリシアに?」
「あの女は危険だ。何か必ずやるぞ。相当気をつけたほうがいいな。」
「――――アウラの時の学びを生かすいい機会じゃないか。」
「あ?」
エルヴィンがふふ、と薄く笑いながら、俺を煽る。
「アリシアの目的をお前が叶えて、丸く収めればいい。」
「――――断る。」
「どうせ抱いて欲しい、程度の望みだろう?気性の激しさはあれど、アリシアは緻密な謀略を張れるような人物じゃない。直情的で典型的な“女”だからな。抱いてやれ、それで終わりだ。」
「断ると、言っている。」