第93章 交流
兵団の為になるとはいえ、不特定多数をここに入れるこの日はやはり危険だ。もう少し警備体勢を強化するか。
そう考えていると、恰幅のいい見慣れた中年の男が通りかかった。俺を認識すると、いつものように明るく笑って見せた。
「―――あ!リヴァイ兵士長!」
「―――ああ、来たのか。」
「ええもちろん!いやぁ、思ったよりもずっと盛況で――――驚きました。あれ、あそこの掲示にある者が全て協賛・投資しているということですか?」
宝石商の店主は訓練場の中央の大きなモニュメントに羅列された商家や貴族の名前に目を止めた。
「そうらしい。去年よりも格段に増えてる。来年はもっと増えるだろう。――――俺達を買うなら、今だぞ?」
「ははは!とんだ商売上手ですね兵士長は!」
店主は快活に笑うと、何かを決意した目をした。
「――――俺じゃ信用に足らないなら、頭を連れて来るが?うちの頭に会えば、理解できるだろう。俺たちの可能性を。」
「――――いえ、結構です。私は、あなたとナナさんに賭けたい。」
「――――………。」
その言葉に、複雑な心境で耳を傾ける。
「お似合い、なんて言葉で片づける気はないんですがね。何というか―――――、強く美しいお2人は――――見ているだけで、力を貰える。」
「――――そうか。なら受付よう。投資額諸々はあっちの兵士と話せ。」
ちょうどそこにいたモブリットを呼んで引き継いだ。
「あぁそうだリヴァイ兵士長、ナナさんにも言ったんですが!!その薬指にナナさんと揃いの指輪を通す時には、それは良い物を用意しますから。仰ってくださいね!」
「―――――考えておこう。」
モブリットと目くばせをして、俺はその場を去った。