第93章 交流
「―――――兵長。なんで……?」
アリシアは驚いた顔で俺を見た。
「――――さっきの男の特徴を教えろ。」
「え………。」
「どのくらいの背だった?声は――――目の色は、髪の色、服装は。」
「――――なんのことですか?」
据わったような目でアリシアが俺に向かって答えた。何を隠す必要がある。
「しらばっくれるな。今ここで背後をとられていただろう。振り向いた時に見たはずだ。男の特徴を言え。」
「――――とられていませんし、見てもいません。そんな男はいませんでした。」
「…………。」
なんだこいつは。隠す意味がどこにある。理解しがたいアリシアの言動に、苛立ちが募る。
「――――殺されるぞ。」
「――――私を抱いてくれなきゃ、私は殺されるって言ったら、兵長はどうしますか?」
「意味不明だな。答える余地もない。」
「抱いてくれないなら、死ぬ。これならわかる?」
「――――興味ねぇ。」
俺の言葉に、アリシアは昏い目をした。
「――――そう、わかりました。」