第93章 交流
兵舎に戻ろうと歩いていると、これもまた見覚えのある金髪の少女が駆けてくるのが見えた。
――――大きくなったな。
「――――リヴァイ兵士長!」
「アイビー。来たのか。」
「!!!覚えてて、くださったんですか!!」
「ああ。」
満面の笑みを零すアイビーは、幼かったいつかの日のナナを思い起こさせる。
左手でアイビーの頭をぽん、と撫でると、アイビーは俺の左手を掴んでまじまじと観察した。
「なんだ。」
「指輪、してないです……!」
「あ?」
「ナナさんにまた、フラれたんですか……?作戦、失敗したんですか……?」
「…………。」
―――――覚えていたのか。さて、どうしたもんかと頭を悩ませる。
「いや、まぁ……まだ時期じゃなかったんだ。いずれな。」
「そうやって時期とかタイミングのせいにしてたら、ナナさんは手に入りません!」
驚いた。
去年は少女だったのに、今や言うことがすっかり女じゃねぇか。生意気なことを偉そうに喜々として述べるアイビーの成長を感じ、それも悪くないと思った。
「――――ナナさんは素敵だから、盗られちゃいますよ?」
「――――そうだな。」
「………リヴァイ兵士長、少し悲しそうです。」
「………お前の気のせいだ。」
アイビーの髪をくしゃっと撫でてその場を終えようとした時、アイビーが自分のスカートを握りしめて、勇気を振り絞るようにして言葉を発した。
「―――――もし、ナナさんが駄目、なら……。わたしが、お嫁さんに、なり……たい………。」
微笑ましい。が、俺はアイビーの頬を指で少し撫でて言った。
「――――悪い、ナナにしか興味がなくてな。」
こんなガキ相手に、話を合わせておけば良いものを―――――俺は何を言っているのかと思いつつ、アイビーが泣いたりしないかを少し心配した。
だがアイビーは目を輝かせて、嬉しそうに笑った。
「――――!!……やっぱりお2人は、すてき、です……!」
――――そこは喜ぶのか?女ってのはとことんわからねぇ。
だが、いじらしくて逞しい。
そして未だにナナのことに関してはこんな小さな嘘も付けない自分に呆れた。