第93章 交流
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翼の日は盛況のようだ。
ナナがいない間の準備を、意外にもサッシュが率先して引き受け、ここまでやってきた。
―――――まるでリンファを失った心の隙間を埋めるように、忙しくしていたかったのだろう。
頭が悪くて仕方のねぇ奴だが―――――、あいつの戦闘力は買っているし、なによりナナのことを良く理解していて、これからも力になる奴だ。リンファを失って泣き崩れるサッシュに添って慰めるような行動をとった自分にも驚いたが、俺はどうやらあの馬鹿のことも気に入っているらしい。
外に出ると、一般人から囲まれてサインやら握手やらをねだられる。俺はそれが煩わしくてこの日は兵舎から出ないことに決めている。このこともサッシュから散々“表に出てファンサービスをしろ”だのしつこく言われたが、兵士長権限を駆使して黙らせた。――――めんどくせぇからな。
窓から訓練場の賑わいを見下ろしていた。
注意すべきはアリシアだ。
「――――諦める冷静さを持ち合わせてりゃ、いいが―――――。」
ふと目をナナの方に移すと、チビに抱すくめられている様子が目に入った。
なんなんだ、変質者か――――と警戒したが、ナナもその背中に手をまわして、あやすように撫でている。
その様子から、知り合いなんだと理解して安堵した。
目線をアリシアに戻すと――――――、ナナを睨んでいた表情とはうってかわって青い顔で、何かに怯えている。
「――――後ろに、誰かいるのか………?」
アリシアの後ろに誰かいるのかもしれないが、壁の陰に上手く入り込んでその姿は見えない。一瞬、その背後にいる奴の手がアリシアの顔に伸ばされ、無理矢理振り向かされているようだ。
――――その仕草、その皺交じりの手、見覚えがあった。
「―――――――まさか――――――――………。」
俺は全力で駆けだして、アリシアの元に向かった。
だが、着いた時にはもうそこに奴の姿は無かった。