第93章 交流
「俺の情報は一切知りえないまま、お前は情報を垂れ流してる。――――これは致命的だぜ?」
――――怖い、ただの暴力的な力を有しているだけじゃない。裏家業のプロだ。
それこそ―――――秘密裏に人を殺すような仕事をしている奴だと確信した。
「―――あの女を殺せる?」
「……あぁ?」
「――――対価は払う。私を好きにしていい。」
「――――ははははっ!!!」
大きく笑うと、その男の手が私の顎を掴んで、無理矢理振り向かせた。目に映ったその男の瞳は私の焦がれる男のそれに少し似た、昏く深い黒い瞳。
「――――好きにしていい、ということは―――――嬲り殺してもいいってことだな?」
「――――っ……!」
全身が総毛立つ。
眉一つ動かさずそれができそうな―――――そんな人間だ。
私が今まで相手にしてきた男たちと一緒にしてはいけなかったと―――――初めて少し後悔した。
けれど私も手段を選ばない。殺しのプロなら好都合だ。中央憲兵が邪魔でなかなか手を出せないけど――――こいつなら、やれるかもしれない。
「――――あんたの情報を聞き出す気なんてない。敵わないの分かってるから……!――――だけどどうしても、あの女が嫌。消して。どうしても欲しい男がいるの――――――、そのためなら、何だってする。嬲り殺してもいい。あの女が消えて、一晩兵長に抱かれたら――――――、殺していいから。」
「女ってのは……怖ぇ生き物だなぁ?愛に縋らねぇと生きて行けねぇとでも、言うようだ……。」
「――――そう。兵長に愛されないなら、生きる意味なんて私にはない。」
「はは……―――――馬鹿な女も悪くない。馬鹿なほど可愛いからな。」
そう一言残して、男は消えた。
承諾したのかしていないのかわからない―――――、分かるのは、もしあの女が死んだら、次は私だということだけだ。