第93章 交流
―――――――――――――――――――
―――――あの女から目が離せないのはなんで?
イライラする。
いつも人に囲まれて、幸せな人生を歩んでいますって顔がムカつく。
人込みの陰に隠れて、その様子を観察する。
なにか握ってやる。ジルからの情報だけじゃ足りない。それに、あんな脅しなんて気にしない。私が純粋?あの女に敵わない?
―――――冗談じゃない。
あの女の代わりでもいいとまで譲歩しても兵長がその気にならないなら――――――あの女に成り代わる。消し去ってしまえばいい。
こんな汚れきった私だから、手が汚れることなんてなんともない。
「―――――穏やかじゃねぇなぁ?人でも殺しそうな目をしてよぉ。」
「!!!!」
――――背筋が凍る、というのを生まれて初めて経験した。
路地に引きずりこまれて犯されたあの日でさえ、こんな恐怖は感じなかった。
途端に命を握られた感触。
振り向けば死ぬ、そう直感した。
背後から感じる絶対的な死の予感。
中年の男の、少し枯れたような声はどこか楽し気で、私を茶化すように話した。
――――いつからそこにいた?全く気付かなかった。
「――――本当にあの女は話題にこと欠かねぇなぁ。ナナ・オーウェンズ。」
「………!!!あんた、も……あの女を、狙ってるの……?」
「狙ってる……?さァな。」
くくっと笑みを零したような笑いが耳元で聞こえた。
「――――知ってるか?お嬢ちゃん。情報はな、言葉の合間に出るんだよ。」
「………?」
「あんたも、と言ったな?お前はあの女を狙ってるってこった。―――――その視線を見るに、殺したいほど憎いってとこか?」
「!!」