第93章 交流
「――――さぁ、去年よりももっとたくさん楽しい事があるよ。みんなで楽しんできて!」
気分を変えるように、パンッと手を叩いて笑顔を作る。
「……うん、みんな、色々見に行こうよ!」
察したのかアルミンがみんなを先導して、方向を変えて歩き出した。それにつられてみんなも訓練所の奥へと、進んで行った。
ただ1人、エレンだけが動かない。
「――――エレン?どうしたの?」
「――――ナナ、辛いのか?」
「――――……ううん?」
エレンに何を心配させてしまったのか。反省を込めて、笑って否定する。
「――――!!」
ふいにエレンが、ぎゅっと私を抱き締める。
いつものように勢い余った抱擁ではない、ようだ。
今まではどんなに強く抱きつかれても、保護者と子供の構図になっていたけど―――――、今ではもう、背が伸びてエレンの肩に私の顎が乗るくらいの対等な大人同士のような抱擁はなんとなく気まずくて、保護者と子供の構図を取り戻したくて、エレンの背中をよしよしと撫でる。
「―――心配してくれたの。ありがとう、優しい子。エレン。」
「――――ガキじゃねぇよ。」
「私からしたら、まだまだ子供だよ。」
ふふ、と笑う。
まるで調査兵団に入団したての頃の―――――リヴァイ兵士長と自分の会話をなぞっているようで、なんだか笑えてしまう。
彼もこんな気持ちだったのかもしれない。
エレンは不機嫌そうに眉を顰めて私を見つめ、ふいっと背を向けて、行ってしまった。
怒っちゃったかな。
でも仕方ない。
エレンもミカサもアルミンも、私にとっては可愛い我が子みたいなものだから。