第93章 交流
そして翼の日。
昨年よりもより多くの人が訪れている印象だ。開門前から人が押し寄せている。
人々に今、娯楽というものがほとんどない中―――――こういった催しに人が集まるのは、希望をどこかに見出したいと思っているからなのかもしれない。
賑わうその人だかりの中を、各箇所の様子を見ながら歩いていると、去年と同じようにその明るい声が飛んできた。
「ナナ!!!!!」
「……エレン!」
エレンが駆けてくる。
―――――ん?なんだか、目線が―――――。
たった一年で随分背が伸びて、抱きつかれた時にはほとんど目線が変わらない。
「エレン、本当に大きくなったね……!」
「だろ?もうすぐナナも抜くな。」
「――――そんなに急いで大きくならないで?」
ふふ、と笑うと、エレンは俯いた。
ほんの少し頬を染めているのは、駆けてきて息が上がっているからだろう。
いつものようにミカサとアルミン、そしてその後ろには見慣れない顔もあった。屋台から放たれる匂いに涎を垂らして目を光らせている女の子、それを指さして笑いつつも、一緒になって楽しんでいる、坊主頭の小柄な男の子。そして見覚えがある、淡いブロンドの短髪の男の子。何かを探すように、きょろきょろと見回している。
「今日はたくさんで来てくれたんだね。」
「ああ。こいつらが一緒に行くって言って聞かねぇから。」
そう言ってエレンが少し面倒そうに彼らを振り返った。