第93章 交流
「――――私はリンファを、愛していました。」
「………そうか。」
「血が繋がってなくても、恋人じゃなくても、こんなにも信じて、大事に想える存在ができるなんて―――――私は想像もしていなかった。」
「……………。」
「………ごめん、なさい………。私が泣くのは、おかしいですけど………、赦して……。」
調査兵団に戻って来たことで最も感じるのは、喪失感。
王都に戻っていた時には紛れていたけれど、ここに戻ると―――――、彼女の面影を、姿を探してしまう。
その声を、笑顔を期待してしまう。
そしてまた、涙が溢れる。涙をぽたぽたと落とす私の横で、サッシュさんがカモミールティーに口を付けた。
「――――この紅茶の香り、なんか知ってる。」
「……それ、は……リンファが、好きだったんです……。」
「カモミールだろ。」
「……はい。」
「――――お前がリンファの側にいてくれて良かった。」
「―――――?」
「髪飾りを見れば、リンファの綺麗な黒髪に同じように飾られたそれを思い出せる。この紅茶を飲めば、リンファが好きだった香りを思い出せる。――――ナナを見れば、その横で笑うリンファを思い出せる。――――負った傷を守るようにガチガチに固めていたあいつの心をナナが溶かしてくれなかったら、それは全て――――なかったものだ。」
「――――………。」
「――――ありがとう、ナナ。」
サッシュさんは笑った。
私よりもずっとずっと辛いはずなのに、私にとびきりの笑顔を見せてくれた。
―――――なんて、強くて優しい人。
「―――――サッシュ、さん………。」
「だからもう泣かなくていい。お前が自分を責める事をリンファは望んじゃいない。」
「………はい………。」
「――――俺もしばらくは無理だけど、きっとまた誰かを愛せる。あいつはいつも自分のことよりも、ナナと俺のことばかりだったから――――……何よりも俺達が強く生きて、愛する人と歩むことを願ってる。」
それから数々の愛しい思い出話をして―――――
夜遅くまで2人でリンファの笑顔に想いを馳せた。