第93章 交流
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翼の日まであと3日。
忙しく動き回ってあちこちに指示をするサッシュさんは本当に頼もしい。
食堂にぽつりと灯りを灯して、夜遅くまで資料を作っているサッシュさんに温かいカモミールティーを差し出した。
「――――ナナ。」
「――――私に手伝えること、他にありませんか?」
「はは、いいよせっかくの一時帰団じゃねえか。色んな奴と過ごす時間に使えよ。」
「――――じゃあ、サッシュさんとリンファの話をする時間に使わせて欲しい。」
「―――――………。」
サッシュさんは少し驚いた顔をして、悲しみを秘めた目を伏せて少し、笑った。
「――――ナナのその髪飾りを見ると、お前が生きてて良かったって、あいつが守ったものが今も煌めいていて、良かったと思うよ。」
いつものように元気で通る声とは程遠い、弱々しく哀愁を含んだ声で言った。
そうか、サッシュさんの手元に遺品として残ったのは――――バラバラに散った髪飾りの一端。
「――――サッシュさんは、友達との間に愛を感じたことはありますか?」
「愛?」
「そう、愛。」
「――――ねぇな、愛なんて大それたものを感じたのは―――――、リンファ、くらいだ。」
その言葉に胸が張り裂けそうだ。
サッシュさんの愛する人を失った代わりに、今、私が生きている。私がそんな表情をしていたのか、サッシュさんが慌てた様子で私を見た。
「――――おい、そういう意味じゃねぇぞ?ナナが生きていてくれて、心底嬉しいんだ、俺は。」
「――――はい………。」
サッシュさんはふっと、小さくため息をついて私の頭をぽんぽんと撫でた。