第92章 一時帰団
―――――翌日、約束通り厩舎の前でリヴァイ兵士長と落ち合うと、リヴァイ兵士長の視線が私の耳元に向けられた気がした。
そしてなんとなく穏やかじゃない視線を感じるのは、彼女かもしれない。
「――――注意、しないと。」
小さく呟いた私の言葉にも、リヴァイ兵士長は反応する。
「どうした。」
「………視線を感じるな、と。」
「そうだな。心当たりはあるのか?」
「はい。目星はついていて――――新兵のアリシア……ですね。」
リヴァイ兵士長の描いた人物と一致したのだろう、同意だ、と小さく頷いた。
「ふふ、でもリヴァイ兵士長と一緒にいると嫉妬と羨望の眼差しは嫌でも注がれるので、もう慣れましたけどね。」
「――――どいつもこいつもくだらねぇことを気にするもんだな。」
「それだけあなたが魅力的なんですよ。」
「――――ふん。」
リヴァイ兵士長は煩わしいとでも言いたげに鼻を鳴らした。
「行くか。」
「はい。どこに?」
「トロスト区だ。まぁとりあえず付いて来い。そして、若干の違和感がある話になると思うが――――話を合わせろ。」
「??はい、わかりました。」
行き先も言わず、内容も言わず、ただ話を合わせろとの指示だ。相変わらず無茶だし分かりにくいなぁと思いつつそれが嬉しいのは、それが彼らしさだから。
私たちは馬を駆ってトロスト区を目指した。
寒いけれど日差しが暖かくて、晴れ晴れとしている空はまるで私の心を映しているようだ。