第92章 一時帰団
「――――君と話していると、夢が広がるよ。」
「エルヴィン団長の野心に感化されているのかもしれません、私も。」
「――――かもな。」
お互い小さく笑う。その時、部屋の扉が鳴った。
「―――――俺だ。」
「ああリヴァイか。どうぞ。」
扉を開けて入室したのは、見たかったその顔だ。
相変わらず不機嫌そうな顔にほっとするのが、おかしいと思いつつ顔が綻ぶ。
「ナナ、帰ったのか。」
「はい、しばらくお世話になります。」
「ああ。」
リヴァイ兵士長はエルヴィン団長の側に歩を進めると、次の壁外調査の段取りや、装備の棚卸、メンテナンスにかかる費用についてなど膨大な量の報告資料をどさっとその机に置いた。
「―――――やれやれ、書類を処理しても処理しても沸いて来る。」
「仕方ねぇだろ。お前の仕事だ。」
「そうだが。まぁたまにはサボりたいという気持ちにもなる。」
「頭のお前がサボったらこの組織は機能しねぇだろ。上に立つ者の責務だ。働け。」
そう言ってリヴァイ兵士長は容赦なく、資料の中から一枚を手にとってエルヴィン団長に差し出した。
「相変わらずうちの兵士長は厳しい。」
「ですね。頼もしいです。」
他愛もないことで笑い合うこの瞬間が好き。心なしか、リヴァイ兵士長の顔も穏やかに見えた気がした。
「あぁそれとナナ。」
「はい。」
「明日の昼から3時間程度、用事がなければ俺に付き合え。」
「??はい、予定は調整できますが……付き合うというのは、外出ということですか?」
「そうだ。ずっと先延ばしにしていたが、翼の日の前にお前を連れて会わせたい奴がいる。」
「わかりました。」
なんだろう、私に会わせたい人??
不思議に思うのと、リヴァイ兵士長と外出するのもずいぶん久し振りで少しだけ緊張する。