第92章 一時帰団
久しぶりの兵服は、身が引き締まる。
家ではロイが髪を下ろしていてとせがむから、ほぼ髪を結わなかった。髪を高く結って、リンファとお揃いの髪飾りを付ける。
――――ああ帰ってきているんだと、実感した。
着替えを済ませてエルヴィン団長の私室から出ると、その蒼い瞳が私を見て細められた。
「―――――いつからかな、君には兵服が一番似合うなと思うようになったのは。」
「最初は違いましたか?」
「そうだな、最初はいかにもお嬢さんなワンピースが似合うと思っていたが。随分逞しくなったものだと感心していた。」
エルヴィン団長がふふ、と笑うと私も小さく笑みが零れる。
「一時的とはいえ戻ってきているので、ちゃんと仕事をします。まず団長に、最高に美味しいコーヒーを淹れようかと。」
「ああ、ぜひそうしてくれ。」
「はい!」
コーヒーの香りも懐かしい。家では紅茶しか出てこないから。丁寧に、気持ちを込めてコーヒーを淹れてエルヴィン団長の机に置く。
「――――エミリーの話は聞いたか?」
「はい。」
「そうか。なら話が早い。医療班の今後についても話をしたい。」
「はい、ぜひ。――――ちょうどエミリーの話を聞いて、医療班ではなく―――――いっそ看護師を兵団に置くことができないかを考えていました。例えば一時離団での看護師資格習得が可能な体制を整えれば、それこそ戦闘に不向きな兵士も活躍の場が広がりますし―――――兵団内で育成する手間を省けます。費用補助がどれくらいできるかが肝になりますが――――――。」
「――――翼の日の規模をもっと大きくして、資金援助先が増えれば夢物語ではないな。」
「そうですね。」