第92章 一時帰団
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――――ナナが兵団に一時的に戻る前日。俺は兵舎の門前で、ジルを待っていた。
「――――何度も言ってるが、まず遅れて来るな。そして遅れて来たならまず詫びろ。」
兵舎からよく見える門前の場所にいつものごとく遅れて来た奴は、まるで悪気も無さそうにだらだらと歩いてきやがる。
「怖ぇなぁ、そんな数分待ったぐらいでよ。早漏とせっかちな男はモテねぇぞ?」
「――――削ぐぞ。」
「はは、悪かったって。」
「首尾はどうだ。」
「おっとそうだな、報告が必要だったよな。ナナの王都生活と中央憲兵の動きだが、相変わらずなにもないぜ。明日こっちに戻ってくるだろ?諦めたのか?奴ら。」
「―――――どうだかな。」
「こんな他愛もない話で報酬をもらってるのが、若干申し訳ないね。俺としては。」
「――――まあ、何もないということが知れたらいい。それと―――――ここで俺とお前が話すことに意味がある。」
「――――まぁそうだな。」
ジルは含み笑いを見せた。