第8章 訓練 ※
「………いくら本人の願望だったとはいえ、兵士長たる立場の者が風紀を乱すのは良くないと思わないか。」
「………そうだな。今後は控えよう。」
「そうしてくれ。」
「今日のナナの訓練内容に変更点があった。明日からの訓練も少し見直したい。このあと話せるか。」
「ああ。では団長室で待っている。」
「わかった。」
俺は今日の訓練の資料を持って団長室に入り、ナナの訓練の様子と負傷者のカルテの件をエルヴィンに報告した。
「………ナナが、手当した兵士の情報を事細かく訓練の報告書に記載している。」
手渡した資料に目を通すと、エルヴィンは感心したようだった。
「ほう、実に詳細まで記載してあるな。」
「これまで怪我による訓練の軽減や免除は、よほどの重傷でない限り各々の判断に任せていたが、この情報があれば班長が指示を出してやることが可能だ。」
「……そうだな。それに、日々の兵士たちの体調や治癒状況を把握できるに越したことはない。ただ、ここに重きを置きすぎてナナの訓練が滞ることも避けたい。」