第8章 訓練 ※
「ああ。それで提案だが、通常訓練の割り方は午前・午後と分けるだけだが、ナナに関しては四分割にしようと思う。午前の頭三時間で立体機動訓練、残りは負傷者の手当、午後はトレーニングと負傷者の手当・カルテの整理。………あいつは訓練の時間を連続で与えすぎると、際限なくやりすぎることがわかった。」
立体機動の訓練で手が擦り切れるまで練習を繰り返していた旨をエルヴィンに伝えると、エルヴィンは快活に笑った。
「それは嬉しい誤算だな!随分熱いじゃないか。最年少で医師になれるような女性だ。その根性は、我々も見習わなくてはならないな。」
「……あと、立体機動の知識はすでに頭に入っている上に、見た限り勘も悪くない。それよりも絶対的に体力と筋力が足りねぇ。午後にトレーニングをさせるのはしばらく続けたほうが良いな。」
「ああ、任せるよ。」
「………おい、適当すぎんだろ。お前それでも団長か。」
俺の提案通りに全て進めるエルヴィンに、苦言を呈す。が、エルヴィンは全くの危機感なく言い放った。
「信用しているからだ。兵士の事を常によく見て、兵団の事を意外にも深く考えてくれている。そんな兵士長の提案に、私から言うことは何もないよ。」
「……………それはありがてぇな。」
こいつはいつもそうだ。腹の底は相手に決して読ませないくせに、腹の底から人を信用しているという。この矛盾に、嫌悪感を頂きつつも惹かれてしまうのは、きっと俺だけではないだろう。