第91章 懺悔
その後病院を後にして、向かったのはヤルケル区から外に出て北西に少し走った場所にある小高い丘。
そこにいくつも並ぶ墓標。
その中の1つの前にエルヴィンが座り込む。エルヴィンのお父様、アラン・スミスさんの墓標だ。
お父様のお墓の前で、エルヴィンは静かに話し出した。そこに眠る父に、話しかけるように。
「――――父さん、紹介するよ。」
私もそっとエルヴィンの隣に立つ。
「ナナ―――――俺の愛する女性だ。驚くなよ、彼女は父さんが外の世界の事を一緒に追っていた、ワーナーさんの秘蔵っ子なんだ。」
エルヴィンはふふ、と笑みを零して私を見上げた。
「ナナ、歌ってやってくれないか。外の世界の―――――素晴らしい世界の歌を。」
「――――もちろん。」
エルヴィンのお父様に届くように、その歌を歌った。
なんて素晴らしい世界――――――私はまだこの世界で一度もそう思ったことはない。
なんて残酷な世界だとすら思う。
けれど、エルヴィンと一緒に――――リヴァイさんと一緒に。見つけ出して見せるから、その真実を。
そうすればきっとこの歌のように――――素晴らしい世界が拓けると信じてる。
「―――ありがとう、ナナ。」
「………ねぇエルヴィン、私もお父さまに話をしてもいい?」
「もちろんだ。」
エルヴィンの許可を得て、私はその隣に同じようにしゃがみ込み、墓標と目線を同じくにした。
「お父さま。初めまして、ナナ・オーウェンズと申します。私はワーナーさんから外の世界のあらゆる言語や知識を学びました。それが私という人間の、核になっています。」
話す私の横で、エルヴィンは静かに目を伏せていた。
「エルヴィンと共に夢を追うことができるのは、ワーナーさんのおかげです。お父さまとワーナーさんの意志は、私たちが必ず継ぎます。この世界の真実を、お父さまが立てた仮説を、証明してみせます。だから――――見ててくださいね。」
「――――頼もしい宣言だな。」
エルヴィンがふふ、と笑った。