第91章 懺悔
しばらくして、エルヴィンはついに真実を口にした。
「――――母さん。」
「……どうしたのアラン?」
「――――……俺はアランじゃない。父さんじゃないよ。あなたの息子のエルヴィンだ。」
「なにを言っているの?」
マリアさんは動揺した表情を見せた。
「――――母さんが幸せそうだから、このままでいてもいいかと思ったんだが……。でも、彼女をちゃんと紹介したかった。彼女は父さんの教え子じゃない。俺の―――――あなたの息子が愛した女性だ。妻にしたいと、思っている。」
「―――――………。」
エルヴィンがベッドの脇の椅子に腰かけて、マリアさんの手を両手でしっかり握って目を見つめて静かに話す。
でも、マリアさんはそれを拒否するように静かに首を横に振った。
「――――……わからないわ……。あなたは、アラン………。」
「俺は、エルヴィンだ。」
「―――……アランは、どこ……?」
「――――父さんは死んだだろう?もう――――26年前だ。」
「――――………。」
マリアさんのその顔が、無になる。
感情を失ったような表情は、いかにエルヴィンの心を抉っただろうか。
「ぁぁあああっ―――――!!」
途端にマリアさんは頭を抱えて呻き出して、エルヴィンはいつものことだという顔で辛そうに俯いた。
その声を聞いた看護師が駆けつけて、鎮静剤を打った。
「――――あまり興奮させるようなことをしないでください。」
看護師の冷たい言葉に、小さく謝罪の言葉を述べて、眠ったお母さんの手をもう一度両手でぎゅっと握ってからエルヴィンは部屋を出た。
私は涙を浮かべながら、その後を追った。