第91章 懺悔
「―――――アラン、来てくれたのね。」
その女性は、まるでずっと待っていた愛しい人を歓迎するような、少女のように透き通った美しい笑顔を見せた。
エルヴィンがベッドに近付いて腕を伸ばすと、嬉しそうな顔で抱擁を交わす。
「――――しばらく来れなくて、悪かったね。」
「いいの。来てくれて嬉しい。」
会えなかった愛しい人を確かめるように、エルヴィンをぎゅっと抱き締めていた。そしてふと、私に目線をやった。
「――――あら、そのお嬢さんは誰?」
「…………あの、私――――。」
「教え子のお嬢さんかしら?」
優しく微笑んだその女性を見つめるエルヴィンの顔が、堪らなく切なくて胸が苦しい。
「そうだ。私の教え子で――――いつかエルヴィンの大切な女性になる。」
「―――エルヴィンの?あら、あなたってば気が早すぎるわ。あの子まだいくつだと思っているの。」
クスクスと少女のように可憐に笑う。
エルヴィンは優しく笑んで―――そうだな、と小さく笑った。
エルヴィンの優しい嘘に涙が込み上げる。
けれど、今エルヴィンのお母様の美しい世界を壊すわけにはいかないから。私は笑って見せた。
「マリアさん。いつも先生にお世話になっています。ナナ・オーウェンズと申します。お花がお好きだと伺いました。」
花束を差し出すと、マリアさんは嬉しそうに受け取って、微笑みを向けてくれた。
「ありがとう、ナナさん。―――本当に素敵な方ね。アランが言うように、いつかエルヴィンのお嫁さんになってくれたら、嬉しいわ。」
「――――私もエルヴィンのことが大好きです。」
「あら、両想いなの?」
「ええ、きっと。」
いくつかのやりとりをする私たちを、エルヴィンは優しい目で見守ってくれていた。