第91章 懺悔
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私が離団してから9カ月。
王都の街路樹が色づき、木の葉が風に巻き上げられて踊る秋を過ぎて――――冬が訪れようとしていた。
私はエルヴィンと共に馬を駆って、ウォール・ローゼの西部の街、ヤルケル区に来ていた。
花屋で心が晴れるような花束を見繕って、それを胸に抱える。これから向かう先の事を考えるとどうにも緊張してしまって、心臓がドキドキしている。
「どうした?緊張しているのか?」
エルヴィンがふふ、と笑う。
「そりゃ、するよ………!」
「そんな取って食われたりしないから、大丈夫だ。」
笑いながら私の頭をぽんぽんと撫でる。
事の発端は1か月前の王都招集の日の夜。
エルヴィンの宣言通りに3ヶ月分めちゃくちゃに愛された後、ぐったりとベッドに伏して動けなくなった私を腕に抱いて髪を梳きながら、エルヴィンが言った。
「―――――来月は王都招集の次の日を、休みにしているんだ。」
「………珍しい、ね………。」
「―――――久しぶりに父と母に会いに行こうかと思ってね。」
「………ご両親………?」
お父様はお墓参りだろう。お母様に会うのは久しぶりで嬉しい予定のはずなのに、どこか憂いを含んだ表情なのはなぜなのだろうと、小さく疑問に思いながらエルヴィンの腕に頭を預けたまま思った。
「一緒に行ってくれるか?」
「いいの?」
「―――ああ。君に来て欲しい。両親に――――紹介したい。」
なんとか力を入れて身体を少し起こしてエルヴィンの顔を見ると、またどこか少し切なげな眼差しで笑った。
「―――なんて紹介しようか、君を。」
「………エルヴィンに任せる。言った通りに振る舞うよ。」
また、ぽす、と頭をエルヴィンの胸に乗せてその鼓動を感じながら微睡む。
「――――ならそのひと時だけは、俺の―――――」