第91章 懺悔
ボルツマンさんに今の巨大になりすぎたオーウェンズを引き継ぐ。
もちろん名前ももろともに、彼のものになる。
父が祖父母から引き継いだ、今も王都の隅にひっそりとたたずむ小さな病院。
現在の本院のように貴族や富裕層を相手にする豪華で最新設備の整った絢爛な様子とはうって変わって、そこは診療所か病院か、という規模で王都に住む平民の傷や病気を癒すための場所だ。
「――――本当にここだけでいいのか?君たちオーウェンズに切り出すのは。」
「はい。」
ボルツマンさんと私と母は、その医院にいた。
「――――娘はまた調査兵団に戻りますし、息子はまだ学生です。私が1人で切り盛りできるのは、このくらいがちょうどいい……。」
「無欲というか、なんというか……リカルドがせっかく築いたものをいとも簡単に手放すのは、彼に同情すらするが?」
ボルツマンさんは母を許していない。
きっと友を置いて去って――――――苦しめた悪妻だと、思っているんだろう。
「――――リカルドがせっかく築いたものだから、あなたに託すのですよ。」
「なんだと?」
母はふふ、と笑った。
「娘より、息子より、私なんかより――――――ずっとリカルドの側で彼を支え続けてきたあなたが最も相応しくて、リカルドも安心できるでしょう。――――例え私たちが死にもの狂いであのままのオーウェンズを引き継いでも………きっとリカルドは心配で天国に逝けないかもしれないから。」
「――――それは、確かにそうかも。」
私も笑った。
今もお父様はどこかで見ているのかもしれない。
戦友と私たちが相対しているのを。