第90章 心頼
「―――――お前はどうしたい?」
「あ?」
「これからも彼女に応える気はないのか?」
「ねぇな。あいつは自分をナナと似ているだろう、と言うが―――――クソほど似てねぇ。興味ねぇ。」
ナナと似ているだろうとアリシアが言うのは、それほどまでにリヴァイがナナしか愛さない、抱かないのだろうと思っているということだ。
それに―――――、話の流れとはいえ、“ナナに似てないから興味ない”と言い切るお前は、無自覚に自分をナナに縛り付けているようだな、と教えてやるべきなのか。
「――――なんだ、気持ち悪りぃ。」
「――――いや。お前が想像以上に我慢強くて驚いている。」
「――――あ?」
「てっきりすぐにどこか手頃な女性で性欲の発散を試みるだろうと思っていた。」
「………お前に関係ねぇだろ。」
「まぁそうだな。」
「心配するくらいなら、性的な意味でナナを貸せ。」
また半分本心で、半分冗談で俺を探ってくる。
「――――誓約書でも書かせないと信用できないな。そのままかっさらってしまわれそうだ。」
ふっと笑ってみると、リヴァイは思いもよらない事を言った。
「――――俺が連れ去ろうとしたって、あいつはもう俺じゃなく、お前の元に戻ろうとするだろ。」
「――――………。」
「――――そうなるように、仕向けたじゃねえか。お前と――――俺とで。」
核心を突くその言葉に、心の内が複雑にかき乱される。
そうだ、ナナが俺にここまで明確に愛情を向けるようになったのは、そうなるようにリヴァイ自身が自分の気持ちを制御して行動していたことも大きい。