第90章 心頼
この世界の真理を暴くという大義名分を果たすため、調査兵団の中で俺とリヴァイとナナがそれぞれ何をどう担うか。
それぞれの力を最大限に生かせるような関係性を、リヴァイと共に創り上げてきたようなものだ。
――――結果それが、俺にとっては甘く―――――リヴァイにとって苦いものになってしまったが。
――――ナナを俺に奪われた構図になったリヴァイが、そこまで荒れずに理想的な兵士長で居続けているのは、少なからず自分の意志でそう仕向けたところがある自負があるからだろう。
「――――そうだな。その通りだ。対巨人だけでなく、対ナナにしても―――――俺とお前は戦友ということになるな。」
「――――厄介な女だからな。」
「――――だが、悪いがナナを性的な意味で貸し出すというのは倫理的に宜しくない。」
「ちっ………真面目か。本心はそこじゃねぇだろうが。」
リヴァイは不機嫌に輪をかけて腕を組んで舌を鳴らした。
「バレたか。ただ俺が嫌なだけだ。彼女はお前のこともまだ愛してる。いや……まだ、ではなく―――――これからもずっと愛し続けるんだ、心の奥底で。俺にとってお前は脅威だ。なるべく触れさせたくない。」
「――――珍しいな、お前がそこまで弱気で守りに入るのは。」
「………なんせ相手がリヴァイ、お前だからな。」
俺の言葉にリヴァイが小さくふん、と鼻を鳴らした。笑みこそ浮かべないものの―――――流れる空気は悪くない。
リヴァイが入団した時に、ここまでの深い関係性になるとは思っても見なかった。ただその力を使ってやろうと、上手く操ろうと思っていたのに――――――今や、まるで半身のように共に、調査兵団を、ナナを守っている。
「―――――前にも言ったが、お前は俺の唯一無二だ。」
「―――――言ってろ。」
振り返って俺を映すその三白眼から、その声から、仕草からお前のことも随分わかるようになった。
照れているんだろう。
―――――お前が最愛の女性を俺に託そうと思うほどに、俺はお前の中で確固たる信頼に値する男なんだと、己惚れてもいいだろうか。