第89章 溺愛 ※
「――――ナナ、来月は本当に覚悟しておいた方がいい………。3ヶ月分抱く。」
「……それは……ちょっと怖い………。死んじゃうかも、しれない………。」
ナナがポツリと呟いたその”死”という言葉に、なぜか今まで死んで行った仲間の最期が脳内を駆け巡るように思い起こされた。
そうだ、いつか俺はこの愛しい宝物を俺の采配で死なせることになるかもしれない。それを覚悟するための1年半だと、そう思っていたのに―――――どうしてもそれが憚られる。
「――――この先君がいつか死ぬなら、俺の腕の中で死んでくれ。それ以外は許さない。」
どうかしていたのかもしれない。
まさかそんな言葉が口から出るなんて、思ってもみなかった。
ナナは少し驚いた表情をした後、ふっと、切なげに笑った。
「――――それはきっと難しいよ。」
「じゃあ死なないでくれるか?」
「それも難しい。いつかは死ぬもの。誰だって。」
「――――俺の見えないところで、俺の采配で、苦しんで、恐怖に満ちて孤独に死なせるくらいなら―――――俺の腕の中で俺が息の根を止めてやりたい。」
そう言ってナナの首に手をかける。
とんでもなくエゴに満ちた、意味の分からないことを言っているのは自覚している。ナナも呆れているに違いない。
けれどナナは、笑った。