第89章 溺愛 ※
「リヴァイにも懇願したか?奥まで突いて欲しいと。」
ナナの顎をすくってその目を捕らえ、鋭利な言葉の刃を向ける。
ナナはいつものように申し訳ない、気まずいと言った表情じゃなく、また新しい顔を見せた。
「――――だとしたら?」
俺の口癖か。
けれどそれは彼女のオリジナルのように使いこなされて、挑発的で妖艶な流し目の端で俺を見下げて、ほんのわずかに口角をあげた。
心臓が痙攣でもしたかのように、身体に衝撃が走る。
「――――たまらないな、本当に―――――。最高にそそるよ、君は。」
君はどれほどの表情を持っているんだろう。
可愛い女、弱い女、賢い女、馬鹿な女、強い女、淫らな女、純粋な女………数々の女性を見てきたが、こんなにもその魅力に底が見えないと思うのは初めてだ。
一つずつ探し出して行こうじゃないか。
これからの人生でたっぷりと時間をかけて。
「――――なんで、嬉しそうなの……?エルヴィンの口癖を真似をしただけなのに。」
ナナはふふ、と笑う。
「――――知れば知るほどわからなくなる君に、俺はもうどっぷり嵌ってるみたいだ。」
「それって、私が不思議ってこと……?」
俺の言葉の意味を理解しかねると言った表情で俺に問う。
「ああ、不思議だな。解き明かしたくなる。」
「??」
よくわからない、といった表情でナナは曖昧に微笑む。
そしてねだるように薄く唇を開いて、ほんの少しだけ小さく顎を上げる。
――――逆らえないんだ、君にはどうやっても。
また俺はナナの甘い唇を塞いで――――――
抱きたくても抱けないこんな時に、その渦巻く欲望に翻弄される。