第89章 溺愛 ※
「―――そういえばね、ボルツマンさんからの提案として―――――、私がライオネル家に嫁いだら、経営分離を考えてもいいって。」
「なに?」
「……何度断っても、ライオネル公爵家に嫁ぐ話は何度も出て来るの。みんな―――――そんなに公爵家とお近づきになりたいものなのかな。」
はぁ、とため息をついた私を抱き締める腕に、少し力が込めらられた。
「――――嫌だ。」
「えっ。」
驚いてエルヴィンのほうを振り返ると、子供のようにまた、拒否の言葉を口にした。
「俺の妻にはならないのに、他の男に嫁ぐなんて許さないぞ?絶対に嫌だ。」
「――――エルヴィン、嫌、とか言うんだ………。」
「そうだな、あまり言わないが――――、君に関することは、普段使わないような言葉が頭を過ることがよくある。」
「他には?」
「――――エロい、とかな。」
思いもよらない言葉がエルヴィンから発されて、思わず面を喰らってしまった。
「………何言ってるの……リヴァイさんじゃあるまいし……。」
「ほう、リヴァイはよく言うのか?」
「………よく、言ってた気がする………。」
「それは癪だな。」
「なぜ?」
「――――それだけ君のエロい姿を見ていたことになるじゃないか。」
「…………。」
「――――俺にも見せろ。ナナの―――――エロい姿。」
そう言うと、後ろから髪の間に除く首筋をがじ、と噛んだ。かと思えば優しく舌で愛撫される。
「ん、やっ………ぁ……!そんな、いつも……十分、見てる……でしょ……?」
「――――あれはリヴァイにも見せた姿なんだろう、きっと。俺が見たいのは――――リヴァイも見たこともないような、とっておきのエロいナナだ。」
エルヴィンの大きく温かい手が器用にシャツのボタンを外して、鎖骨をなぞってから胸へと差し込まれる。
いとも簡単に胸を曝け出されて、体温が上昇して身体が紅潮するようだ。
――――でも今日は、だめ。