第89章 溺愛 ※
話し合いを終えて、それぞれの部屋に戻る。私はエルヴィンの服の裾を少しつまんで、その蒼い瞳を甘えるように見上げた。
「―――どうした?」
「………もう少しだけ一緒にいても、いい?」
「歓迎するよ。」
ふふ、と小さく笑って、エルヴィンは部屋に入れてくれた。
扉を閉めた瞬間に、その逞しい首に両腕を回してぎゅっと抱きつくと、エルヴィンもまた私の身体を強く抱き締めてくれた。
「――――ありがとうエルヴィン……。」
「俺は何もしてないぞ?」
「――――ううん、いっぱいヒントをくれた。」
背伸びしたままエルヴィンの首筋に頭を預けると、いつもの彼の香りがする。
私はいつの間に――――こんなにこの香りが好きに、心安らぐようになったんだろう。
一緒にいれば、何だってできる気がする。
私は強くなれる。
いつだってエルヴィンは、私に新しい世界や可能性を見せてくれる。
「――――君が頼ってくれて、嬉しい。」
「……ごめんね、団長補佐がいなくて団長の執務も忙しい中に、こんな厄介なことにまで刈り出して………。」
「心配は無用だ。しかも俺は君がこの難局をどう乗り越えて、さらにどんな魅力を得ていくのかが楽しみで仕方ない。」
「――――期待に応えられるか少し心配はあるけど、頑張る……あと、一年………。」
「ああ。待っている。」
身体を離すと、エルヴィンが私を抱きかかえた。
「一か月ぶり……いや、こうして触れるのは二ヶ月ぶりだ。前回はハンジに取られたからな。もう少しゆっくり君を補充したいんだが、いいか?」
「――――うん。」
微笑みを返すと、エルヴィンは私を抱えたまま、ベッドに豪勢にいくつも並べられた枕に背を預けた。
エルヴィンの大きな身体に背中からすっぽり包まれたかと思うと、髪をかき分けて首筋に小さくキスをくれる。
その逞しい腕で身体をぎゅ、と抱かれると、驚くほど心が安定していく。