第88章 自涜 ※
「おい、聞いてんのかアリシア。」
その三白眼が、私を見てる。
ナナさんじゃない、私を見て、私を呼んでる。
この抑えきれない興奮を、止めることが出来なかった。
私はリヴァイ兵長に歩み寄ってその腕を引っ張り、無理矢理一番近くの―――――イルゼさんのベッドに、全体重をかけて私もろともに、兵長の身体を引き倒した。
「―――おい……っ、てめぇ何……っ!!」
すごい力で両腕を押さえつけられ、少しの混乱と不機嫌さを宿した目が私を見下ろす。
――――たまらない。
欲しい、早く。
どんな手を使ってもこの人が欲しい。
「――――何度も言ってるじゃないですか、抱いてって………。」
「―――――あ?」
「愛してなんて言わない、面倒臭いことなんてなにも言わない。縛っても、殴っても、痛くしてもなんでも受け入れる。従順でいるから――――、性欲発散の道具でいい。抱いて。」
縋るようにありったけの懇願の言葉を並べると、リヴァイ兵長は心底嫌悪しているといった侮蔑の表情を向けた。
「――――やめろ。気持ち悪ぃんだよ。」
「嫌です。やめない、あなたを手に入れるまで。」
「俺はお前に全く興味がねぇ。」
こないだのことで学んだ。
“私”として挑んでも一向に乱されないのに、ナナさんの話を出した途端、面白いほどに乱れるじゃない。
あの時だって――――分隊長が割って入らなければ、きっと私のことを抱いていた。
「――――顔を隠しましょうか?」
「………あ?」
「背格好も似てる。髪の巻き具合から長さも似てる。色は少し違うから―――――部屋を暗くして……そうすれば、即席の“ナナさん”を抱けますよ。」
「―――――!」
「欲しいでしょう?ねぇ、兵長。――――みっともなく、まだ、好きなくせに。」
「――――殺されてぇのか。」
初めて見るほどの怒りを宿した目に、またゾクゾクする。その右手が私の首を掴んで、ギリ、と力を込められる。